【今日の学び】人は急には変われない――「個の中心核」は幼少期につくられる

人は急には変われない――「個の中心核」は幼少期につくられる

 子供の頃の経験は、年を取ってからも鮮明に思い出せるものです。友達と悪戯をして家の蔵に閉じこめられたこと。祖父から貰った少額のお小遣いで、「もう少しくれたらキャラメル以外も買えるのに」と思いながらキャラメルを買ったこと。数日我慢してチョコ饅頭と三角コーヒーを買ったこと。捕鯨船の船員さんに「坊や、おいで」と声をかけられ、船の中を見せてもらったこと。父と一緒によく喫茶店に行ったこと。父が自分を笑わせようと、可笑しなことをしてくれたこと。お祭りでたまに綿菓子を買ってもらえると嬉しかったこと。玩具売り場である玩具を見て、母と店員の女性が「こんな玩具を子供に買うとロクな人間にならない」と意気投合していたこと。塾をさぼった日に限って先生が家庭訪問に来て、すぐに母にバレたこと。弱い者いじめは許せずに喧嘩したこと。
 こうした子供の頃の体験、他者との関わり、周囲の環境は、人間の成長過程において極めて重要です。何故なら、一人の人間としての価値観、善悪の判断基準、世界観といった「個の中心核」は、小学校を卒業するまでの幼少期に形づくられるからです。
 一般的に、自我に目覚め、個としての基盤が築かれるのは12歳頃までと言われます。その後、思春期(通常12歳から18歳)を迎え、古典と呼ばれる詩や哲学書、心を揺さぶる音楽作品などに触れながら、幼少期に築いた「中心核」が洗練されていきます。つまり、成長過程は二段構造になっており、まず幼少期に個の中心核が形成され、次に思春期にその中心核が成熟していくのです。
 もちろん、大人になってからも様々な経験を積み、それらは人間としての深みや、さらなる成長へとつながっていきます。しかし、それらは中心核の周りに付着したようなものであり、一人の人間としての核は変わらないのです。幼少期にそれを強固に築いた人は、良くも悪くも一生それを持ち続けます。また、その大切な時期に強烈なショック(いわゆるトラウマ)を受けた人は、大変な思いをすることになります。中にはそれを肥やしとして成長する人もいますが、大人になっても引きずってしまう人もいます。
 「人は急には変われない」という理由は、ここにあります。例えば、ずっと思考してこなかった人が、急に思考できるようにはなりません。他人に気遣いをせずに生きてきた人が、ある日突然気配り上手になることもなければ、雑な人が急に繊細になることもありません。それらは、その人が幼少期からそのように生きてきた結果だからです。
 しかし、ここで大事なのは、「変われない」のではなく、「急には変われない」ということです。人間には、考え、行動する力があります。もし、「今のままではいけない」と本気で変わりたいと願っているなら、人間は変わることができます。そのための第一歩は、幼少期からの自分を振り返り、自分自身と向き合い、洗い直すことです。普段忘れていた記憶の中に、今の自分の核となった源があります。そこに気づくことが改善の糸口になります。そして何より大切なことは、日々の生活において、考え続けること、そして、一つひとつを丁寧に行うことです。どのようなことも、すべては小さなことの積み重ねです。そこから変化が始まります。日常生活にこそ、本質が内在しているのです。

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