- “基礎学力のようなもの”と“本物の基礎学力”
辞書で“学力”を引くと、「“身についた”学習の成果」「その人の修める学問についてのすぐれた判断力(洞察力)」とあります。つまり学力とは、単に知識を蓄えることでも、試験で高得点を取ることでもなく、学んだ内容を自分の内側に浸透させ、社会の中で妥当に生きるための能力と言えます。
ところが日本では、多くの人が、試験で良い点を取るため、周囲に認められるため、あるいは入試や資格試験に合格するためと、目先の欲を満たす目的で、暗記により知識を詰め込みます。こうして“欲”から得た知識――ここでは“基礎学力のようなもの”と呼びます――は、実際にはほとんど役に立ちません。そして残念なことに、その欲が満たされれば、それらはすぐに忘れ去られてしまいます。
典型的なのは、大学入学までは必死に勉強して膨大な知識を詰め込んだにもかかわらず、合格後半年も経てばその大半を思い出せなくなるとうことです。なぜ忘れてしまうのでしょう。その理由は、詰め込んだ知識が単なる断片の寄せ集めであり、相互に結びついていないからです。本当の知識とは、断片と断片が結びついたり融合したりし、体系化・組織化されていくことで初めて形成されます。
では、どうすれば、本当の知識を身につけることができるのでしょう。
第一に、目先の欲、自己中心的な欲を手放し、「何のために学ぶのか」「どのように生きるべきなのか」を自分自身に問い直すことです。第二に、学んだ一つひとつの断片を丁寧に咀嚼することです。すると、堅い断片が柔らかくなり、別の機会に学んだ内容と自然につながります。そのつながりが濃くなっていくと、やがて確かな基礎学力へと育っていきます。そして、この咀嚼には柔軟な思考能力が欠かせませんが、一体どのようにしてそれを養えばよいのか、それについては、改めて考えてみたいと思います。
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