- 学問の系統的理性性
現在、学問には多様な専門分野が存在し、それぞれの領域で専門性を深めることは重要です。しかし、「私の専門は医学だから哲学を学ばなくてもよい」と考えるのは誤りです。なぜなら、古代ギリシア語で「哲学」(philosophia)とは「知を愛すること」を意味し、学問を行うことは哲学することと同義であり、哲学は諸学の基礎をなすからです。
そもそも学問が現在のように細分化された専門分野へと分かれたのは近代以降のことであり、それ以前の学術は様々な領域を総合的に扱っていました。古代ギリシア時代のミレトス学派のタレスは「自然哲学の創始者」と呼ばれ、ミレトスは自然科学の発祥の地とされています。哲学者が自然科学を探究し、逆に自然科学者が哲学を行うことは自然のことでした。デカルトやパスカルも哲学者であると同時に数学者としても大きな業績を残しています。
日本においても、明治初期のインテリ層は自らの専門分野にとどまらず、幅広い学問領域を学んでいました。例えば、西田幾多郎先生は哲学、同郷の鈴木大拙先生は仏教学を専門としましたが、両者とも人文科学・社会科学・自然科学という諸学の基礎を学んでいました。
学問という立ち位置から歴史を振り返ると、古代ギリシアのプラトンが創設したアカデメイア学園が現在の大学の起源とされ、「アカデミー(Academy)」という語の由来にもなっています。また、プラトンの二元論がなければ、今日の学問はなかったとさえ言われています。
古代ギリシアで築かれた学問の基礎はローマ帝国の時代に繁栄し、それが世界最古の大学として知られるイタリアのボローニャ大学(1088年創立)へと受け継がれました。ボローニャ大学は現在の大学の前身であり、最初は法律学校として始まり、学問を初めて人文科学・社会科学・自然科学の三つの分野に体系的かつ系統的に整理したことでも知られます。ソルボンヌ大学(仏)、オクスフォード大学(英)、ケンブリッジ大学(英)、ライデン大学(蘭)、フローニンヘン大学(蘭)などのヨーロッパの大学は、いずれもボローニャ大学を模範として学問体系を整備しました。
これらヨーロッパの大学を手本としたのが、アメリカのハーバード大学(元は神学校)やプリンストン大学などのアイビーリーグです。アメリカではヨーロッパのように歴史を感じさせることが難しかったため、大学を古く見せるために校舎に蔦を絡ませたことが「アイビーリーグ」と呼ばれる所以です。
日本では、明治維新以降、欧米を模範として大学が設立され、多くの大学が法学校から始まりました。これが世界史、すなわち人類の歴史における学問の系統的理性性の流れです。
すべての学問の基礎は哲学にあり、すべての学問は人間の幸福実現のために存在し、互いに関係しています。学問を正しく行うためには、人間を深く理解することを大前提として、自分の専門分野を深めるだけでなく、学問の基礎、そして関連する領域を学ぶことが不可欠です。
「今日の学び」に記す内容は、すべて生井利幸先生より日々賜る学術講義に基づき、弟子の私、竹内差世がまとめております。
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