【今日の学び】10万円のチケットと無償のチケットの価値

10万円のチケットと無償のチケットの価値

 オペラ、クラシック音楽、ミュージカル、ロックなど、どのようなジャンルであっても、自宅以外の会場で鑑賞する場合には、通常、一定の費用がかかります。オペラであれば、リハーサルや舞台設営期間を含めた会場費、舞台装置とその輸送費、衣装代、オペラ歌手や交響楽団などの出演者への報酬、さらには、関係者の人件費、交通費、宿泊費など、多くの費用が必要となります。それらに運営側の利益が加算され、チケット価格が決まります。
 あるとき、自分の教養を高めるために10万円のコンサートのチケットを購入したとします。多くの人は、当日雪が降ろうと、仕事でトラブルが起ころうと、よほどの事情がない限り何とかして会場へ向かおうとするでしょう。
 では、これが無償のコンサートだったらどうでしょう。内容を見て自分のためになると考えて自ら申し込んだにもかかわらず、当日少し都合が悪くなると、「仕事で行けなくなりました」「雪で帰りの電車が心配なので欠席します」といった言葉を、驚くほど簡単に口にする人がいます。
 この2つの違いは明白です。自分が損をするかしないかです。10万円のコンサートに行かなければ、自分の投資が無駄になります。一方、無償のコンサートであれば、欠席しても自分は痛くもかゆくもありません。自分が申し込んだことにより参加できなかった人がいることや、主催者側が費やした時間と労力には考えが及ばないのです。残念ながら、こうした行動をとる人が少なからずいるのが現実であり、人間の本性の一つです。
 しかし、少し考えればわかることがあります。無償のチケットは決して無償ではないということです。無償のコンサートを開催するにも、会場設営や準備を含め、主催者側は相当な時間と労力が必要になります。そして何より、それを行う人の心があります。
 教養人と呼ばれる人は、10万円のチケットか無償のチケットかで自身の行動を変えることはありません。むしろ無償のものにこそ価値を見出します。それを開催する人の心に重きを置くからです。ところが、世の中には、このことがわからず、自分の損得と表面的な値段だけで物事を判断してしまう人がいるのです。
 しかし、物の価値は決して価格で決まるものではありません。ある女性は、どんなに高級なレストランの食事よりも、被災したときに駆けつけてくれた炊き出しのおにぎりが今でも一番おいしかったと言います。世の中にはいくらお金を出しても手に入らないものがあります。人の心は、無償の愛は、その中で最も大きな価値の一つです。

「今日の学び」に記す内容は、すべて生井利幸先生より日々賜る学術講義に基づき、弟子の私、竹内差世がまとめております。

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