- 個人の尊重と人間の尊厳
「個人の尊重」と「人間の尊厳」。 法律家や研究者でなければ日常的に使う言葉ではありませんが、書籍などで一度は目にしたことがあるでしょう。どちらも私たちにとって極めて重要な概念であるにもかかわらず、深く考える機会が少なく、両者を混同して理解している人もいます。しかし実際には、両者はまったく異なる概念です。本稿では、その違いを分かりやすく整理します。
まず「個人の尊重」とは、日本国憲法にも掲げられているように、人間社会という枠組みの中で、一人ひとりを大切にし、相互に尊重し合うという考え方です。 地球上の生命全体という大きな枠で見たときには、“人間という層”だけを取り出して考える、いわば“横割り”の視点と言えます。
一方で「人間の尊厳」は、“地球上のすべての生命体という大枠”の中で、人間が唯一尊厳のある存在であるという捉え方、つまり、生命の階層の中で人間をどう位置づけるかという、“縦割り”の視点で捉えているのが特徴です。犬や猫が食べるために食べる(本能にしたがって生きる)のに対し、人間には理性が賦与されました。そのため、「人間は、理性を用いて理性的に生きなければならない」という考え方がそこにあるのです。
AIが普及しつつある今、一人ひとりが、“自ら考える”という行為の意味を、「人間が生きるとは何か」「人間の尊厳とは何か」を改めて考える必要性をひしひしと感じます。
【関係する動画講義】「イタリア・ルネサンス期の哲学者、ジョヴァンニ・ピコ・デッラ・ミランドラが唱えた『人間の尊厳』」